川崎界隈を歩く―鶴見線と巨大団地と廃墟
2020年12月20日。
一度も旅行に行けないまま1年が終わろうとしていることにいてもたってもいられなくなって、せめて近場ならと川崎方面へ散策に出かけた。
なぜ川崎かというと、4年前に”YMOプロパガンダ巡礼”と称して鶴見線の「昭和駅」を訪れてからというもの工業地帯を走るローカル感ある素朴な鶴見線がすっかり気に入ってしまったからだった。
そんなわけで(?)4回目の乗車となる今回は「大川支線に乗る!」を目的に休日朝6時前に自宅を出発した。鶴見線自体は本数もそこそこあるのだけれど、大川支線は完全に大川駅最寄り企業への通勤用の路線のため1日朝と夕方の2、3本しかないので、まあ必然的に鶴見駅→大川駅行きの朝の便に乗ることになる。
土曜日にもかかわらず鶴見駅からの乗客がけっこういて「こんなに大川駅行きの人が…?」と思っていたら、ひとつ前の武蔵白石駅まででほぼ下車。終点大川駅で降りたのは私含めて3人程度だった(写真を撮っていたので同志と思われる)。
渋い外観の駅舎。元々隣に小屋でもあったのだろうか、側面には原爆型トマソンが。
ここからの流れは①武蔵白石駅まで歩いて戻り、②電車で扇町駅まで行き散策したのち③徒歩で浜川崎駅まで行き南武線で川崎駅へ、である。
散策開始早々、大川橋から眺めた扇町方面の工場群にテンションだだ上がり!
煙突から立ち上る大量の煙が冬空にめちゃくちゃ映える。これぞ工業地帯という情景がたまらない...!(休日のため人通りはほとんどないが、朝から興奮気味で写真を撮りまくる怪しい女がひとり...)
武蔵白石駅付近の踏切の架線、なんとなく巨大生物のようで迫力がある。錆び具合がまたいい味を出していて、いつ見てもグッとくる。
予定していた時間の電車に乗って終点扇町駅へ。ここでも下車した人はほとんどいなかった。大川駅ですれ違った、折り返しの電車に乗って行っていた親子(父母+鉄道好きらしい小学校低学年くらいの息子)に再び遭遇。「こいつまたいる」と思われただろうな...。
扇町駅は猫の駅として有名で、以前来た時は駅の入口に何匹も寝そべっていたのだけれど今回は点在する三匹しか見かけなかった。
入口のアーチのようなものが特徴的な佇まい。
扇町駅からは事前にGoogleMapのストリートビューで予習していた道を辿る。小心者なので予習していなかったらおそらくびびってすぐに引き返していたと思う。
この光景が目の前に出てきた衝撃。かっこよすぎる!間違って敷地内立ち入ってしまっていないか確認しながら先に進む。
大川橋から見たであろう大量の煙を排出している工場その1。
大川橋から見たであろう大量の煙を排出している工場その2。
空を仰ぐと煙がどんどんこちら側に流れきていて迫力がすごかった!そういえば不思議とこの辺りは工業地帯特有の独特な匂いはしなかったな。
『A Y.M.O FILM PROPAGANDA 』の冒頭に出てくる「昭和駅」。初めて鶴見線に乗るきっかけとなった駅でもある...のだけれど、2年前に来たとき近代的なこじんまりとした外観に変貌を遂げていてだいぶ動揺した。YMO遺産がまたひとつ失われてしまった...。
閑話休題。
浜川崎駅へと向かう道すがらの工場たち。やはり巨大なプラントというのは迫力があってかっこいい!
さて次なる目的地へ向かうべく浜川崎駅から南武線に乗り込み川崎駅で下車。駅から徒歩20分くらいにある「河原町団地」というのが、巨大なうえかなりかっこいい造形らしい。
若干道に迷いながらたどり着くと、本当にこれは団地か?と思うほどいわゆる「THE・団地」のイメージからはかけ離れてた建物がそびえ立っていた。
とにかく見た目のインパクトがすごい!こんなかっこいい団地が存在していたとは...なんだか日本じゃないみたいだ。ちなみにこの斬新な逆Y字の構造は下層階の日当たりを良くするために生み出されたのだそう。
開放感のある広大なエントランスホールのような空間。
中庭にはカラフルなイスだろうか。 学校帰りの子供たちが遊んでいそうな雰囲気。
エレベーターホールも広々としている。 奥に見える扉はダスト・シュートの設置された部屋。
上層階はかなり見晴らしがよく、建物の白い外壁と青空のコントラストが美しい。
不動産サイトの情報によると、河原町団地は1975年10月に竣工した15階建て全440戸の大規模マンションで住戸によって多様な間取りとなっているそう。夏には団地内の一大イベントとして神輿や盆踊りもあるお祭りが行われるとか。住んだことはないけれど、子どもの頃近所の団地での夏祭り、毎年楽しみにしてたなあ。そんな情景を思い浮かべつつ巨大団地をあとにした。
最後に川崎じゃないけれど鶴見線(というか「昭和駅」)とセットで行きたくなる場所、根岸競馬場で今回の小旅行を締めくくろうと思う。
前回も全く同じ構図で撮ったけれど、なんだか来たからにはここから撮らずにはいられない。
4年前と変わらず荘厳な佇まい。ただ、前回来た時はしっかり塞がれていた窓の一部が劣化により剥がれ落ちてしまったのだろうか、中が見える状態に...廃墟にしては内部の状態がきれいに保たれていると聞いたことがあるけれど、風雨が吹き込んで荒廃してしまったらと不安になる。
こちらも窓の向こう暗闇が目立つ。
こんなところに猫さんが!
いま現存してくれているうちはその姿をこうして見ることができるけれど、廃墟の性質上いつなくなるかもわからない。きちんとした管理のもと修復や保存がされない限り老朽化によって解体されてしまった二等馬見場と同じ道を辿ることになるのではないか、根岸競馬場の遺構はこれからどうなっていくのだろう...と私なんかが考えてもどうしようもないことをぼんやり思いながらしばらく眺めていた(もちろんBGMはYMO『邂逅』)。
最後はなんだか少ししんみりした気持ちになりつつも、鶴見線、工場、団地、廃墟と川崎界隈をめぐる1日の充実感は1年間どこにも旅行へ行けなかったということもあって一入だった。
今度はまだ行ったことのない千鳥町方面まで足を伸ばしてみたいし、夜景の臨める時間帯に鶴見線に乗車してみたり桜の季節に根岸競馬場へ行ってみるのもいいなあ。写真を見返しながら早くも次が楽しみになっている。私が見てきたのはほんの一部に過ぎないけれど、川崎は本当に良いところです。